高尿酸血症と痛風
会社健診などで、自覚症状がなくても意外と指摘される病気、それが高尿酸血症です。日本では痛風の患者さんは100万人、また高尿酸血症の患者さんは約1,000万人と推定されています。
高尿酸血症とは、採血で尿酸7.0mg/dl以上あると診断されます。
尿酸とはなにか?食事に含まれるものを主体とした「プリン体」が分解されたものです。通常は食事以外にも、体内でも作られ(産生)、尿や糞便とともに排泄されます。このプリン体の摂取・産生と排泄のバランスがとても大事で、何らかの原因でバランスが崩れ、体内に尿酸が増えると、高尿酸血症になります。理由としては、暴飲暴食もありますが、遺伝的に尿酸排泄がしにくい家系だと、中高年になり、どんなに食事やアルコールを摂生しても尿酸値が高くなることがあります。高尿酸血症の患者さんの80%は、高血圧や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病を合併していることが知られています。これらの病気そもそもが、動脈硬化を招きますが、尿酸自体も動脈硬化を招く原因ともなります。
その要因は、血液内の尿酸は、8.0mg/dlを越えてくると、結晶化が始まります。尿酸の結晶が足先に蓄積すると、痛風発作になります。しかし、痛風発作で困らなくても、やはり尿酸が高い状態は尿酸の結晶が血管を痛めることから、動脈硬化が若くても進んでしまいます。
高尿酸血症の治療は、生活習慣の改善をまず取り組むことが大事ですが、8.0mg/dl以上は痛風発作予防のため、内服薬を開始するのがオススメです。そして、ガイドラインでは、尿酸値は6.0mg/dl以下にすることが目標になります。
食事療法は、バランスの取れた食事が大事ですが、エネルギー(カロリー)も抑えるように心がけます。食材もプリン体含有量が多い、レバー、カツオ、魚卵、白子、などは控えます。また飲酒に関しても、厳密な禁酒は不要ですが、ビールは350~500ml/日、日本酒1合、ウイスキー60ml/日程度が1日の目安です。また、甘味飲料やフルーツジュースも尿酸値を上げるため適量に留め、お水やお茶を飲むようにしましょう。特に、普段、診察をしていると、なんとなく痛風発作、高尿酸血症が悪くなるなぁ、と感じるのは夏の時期です。脱水になると、発症しやすい病気ですので、注意が必要です。
おまけですが、尿酸に関してお話すると、「尿酸は悪者!!」のイメージが強いですが、実はその他の作用として、抗酸化作用もあります。ですから、抗加齢(アンチエイジング)の観点からすれば大事な物質でもあるのは、興味深いところです。また、痛風は古くから知られた病気の1つでもあり、芸術家のミケランジェロ、文豪のゲーテやダーウィン、ニュートンなども痛風発作で苦しんだと言われています。