便潜血検査(血便)と大腸カメラ検査(大腸内視鏡)
一般的な健康診断・職場健診では、よく大腸がん検診として便潜血検査を行います。正確を期するため、検査日の数日前に2日にわけて便を専用のスティックで擦り取り、容器に入れて検査日に持参する、「便潜血2日法」が主流になっています。大便の中に目に見えないほどの血液が混ざっていないかどうか確認するための検査です。もし便潜血検査が陽性の場合、まず大腸からの出血が疑われますが、その他に痔による小出血でも陽性になります。実際に、便潜血陽性となった患者様に大腸カメラ検査を行うと、70%程度は痔の出血、30%弱が大腸ポリープからの出血、そして3%程度に大腸がんが見つかるという報告があります。一方、大腸がんは出血がない例も多く、陰性であっても安心できるとは限りません。便潜血検査は、大腸カメラ検査を受けるきっかけ作りの検査として考えると良いでしょう。
大腸がんとは
大腸がんは、食生活の欧米化などの原因で、現在増加中のがんです。罹患数では2019年の統計で男女計が第1位、2020年の統計で死亡率が男女計で第2位となっており、これからも増加すると考えられています。
大腸がんは、早期に発見できれば、内視鏡による切除で完治することも可能ですが、早期のうちは自覚症状に乏しく、発見が遅れて進行させると、外科手術や放射線療法など、負担の大きい治療が必要となってしまいます。
そのため、定期的な大腸カメラ検査は大腸がんの早期発見に必須のものとなっています。
便潜血検査で陽性となった方へ
大腸カメラ検査を受けましょう
便潜血検査は、目に見えないほどの血液が便に混じっているかどうかを検査する方法で、もし陽性の場合は、消化管から肛門までのどこかで出血が起こっていることを意味します。その確率に関しては、痔が最も高く、100人中30人弱に大腸ポリープが見つかり、大腸がんは100人中3人程度に見つかるとされています。まずはどこの部分から何が原因で出血しているのかを突き止めるため、大腸カメラ検査を受診してください。
バリウム検査
これは肛門からバリウムと空気を注入して大腸を造影する検査ですが、病変のサイズや位置によっては発見できない場合もあります。また確定診断のためには大腸カメラ検査が必要になってしまいます。
大腸カメラ検査は早期の大腸がんを発見できる唯一の検査
大腸カメラ検査は、大腸全体の粘膜を直接観察できる唯一の方法です。また当院ではオリンパス社製の上位機種を導入しており、普通なら見つかりにくいような病変でも、特殊な照明を当てることで、くっきりと鮮明な映像として得ることができるため、見落としがありません。疑わしい病変を発見したら、その場で採取し病理検査で確定診断に結び付けることも可能です。また出血があれば止血をすることも可能で、前がん病変である大腸ポリープ(腺腫)を見つけたら、その場で切除する日帰り手術が可能で、将来のがん化の予防にも役立ちます。
つまり大腸カメラ検査は、早期の大腸がんを確実に見つける唯一の検査であり、1日の検査で、検査、診断、治療、予防までができる優れた検査です。
楽に受けられる専門医による大腸カメラ検査
大腸は曲がりくねり内部もヒダの多い構造になっています。大腸を肛門から回腸の寸前の部分までくまなく観察するために、スコープを苦痛なく進めていくためには、医師の手技が大きな役割を果たします。当院では、最新で高度な内視鏡システムを使って、日本消化器内視鏡学会が認定する内視鏡専門医の資格を持った医師が、細心の注意を払いながらも迅速に正確に検査を行うことができます。そのため、患者様に与える苦痛も最低限に抑えることが可能です。また、うとうととした状態のまま検査を受けられる鎮静剤を使用する方法も選択いただけますので、安心してご相談ください。
検査時に、初期大腸がんや前がん病変のポリープ切除も可能
大腸カメラ検査は、早期の大腸がんや前がん病変である大腸ポリープを確実に発見するための唯一の方法です。大腸カメラ検査を定期的に受ければ、大腸がんも早期のうちに発見でき、内視鏡による簡単な処置で完治できてしまうため、怖い病気ではなくなります。
また、大腸カメラ検査によって、前がん病変である大腸ポリープ(腺腫)が見つかった場合、その場で切除する日帰り手術を行うことができます。これによって、将来のがん化を予防することが可能になります。
ただし、ポリープが大き過ぎる場合や数が多すぎる場合など、また、血液をさらさらにする薬を服用している場合などは、出血のリスクがあるため入院の上、切除を行ったり、休薬した上での切除が必要なため、その場での切除ができないことがあります。
便潜血陽性を良いきっかけに
便潜血検査が陽性の場合、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門のどこかから出血があるということです。出血の理由は炎症であったり、ポリープやがんが食物と擦れておこったものであったり、様々です。便潜血陽性では、多くの場合は大腸から肛門までの出血が大半を占めます。ほとんどは痔が原因で、便潜血があったからといって重篤な疾患とは限らないのですが、万が一ということもあります。実際に100人に2~3人程度は便潜血陽性の後の大腸カメラ検査で大腸がんが見つかっています。便潜血検査は、大腸がんのスクリーニング検査として正確なものとは言いづらい部分もありますが、大腸カメラ検査を受けるための良いきっかけと捉えて、検査を受け、痔であれば痔の治療をしっかり行うことで、便通の状態が良くなり、大腸の負担も軽減し、大腸ポリープが見つかれば切除して将来のがん化を予防することも可能です。また、万が一大腸がんが見つかっても、早期がんであれば、侵襲の少ない簡単な治療で完治が可能です。
便潜血検査陰性の方へ
便潜血検査は、検査した時点で消化管や肛門からの出血があったかどうかが分かる検査です。たとえ大腸がんがあったとしても常時出血しているわけではありません。また柔らかい便が通過する大腸の奥の方などでは、たとえがんがあっても、ほとんど出血がおこらないこともあります。わかりすやく説明すると、「便潜血検査は過度に期待する検査ではない」と考えて頂く必要があり、便潜血検査が陰性であっても安心せず、前がん病変である大腸ポリープができやすくなる40歳を過ぎたら定期的に大腸カメラ検査を受けるようにしましょう。
また、血縁家族に大腸がんや大腸ポリープを患ったことがある方がいる場合は、40歳にみたなくても定期的な検査を受けることをお勧めします。
便潜血検査に関するよくある質問
便潜血が「陰性」なら、大腸癌は大丈夫と、思ってよいですか?
「便潜血陰性=大腸癌はありません」にはなりません。2日間にわたり、検便をして血液が含まれていない状態です。良性のポリープや比較的早期の大腸癌の場合には、まだ出血が見られない事があります。ですから、便潜血の結果だけで、大丈夫と考えるのは危険です。
もう一度、便潜血検査を受けて陰性なら大丈夫ですか?
1回でも検便で陽性なった場合の次のステップは、「必ず大腸カメラ」とお考えください。追加で何度も便潜血検査をして陰性だったとしても、一度でも陽性だった場合には大腸癌を否定することが出来ないためです。
便が赤くないのに、便潜血陽性なんですか?
便潜血検査は、目では見えない血液を検出する検査ですので、普段の便では確認は出来ません。(便が赤い場合には、「血便」といいます)
痔(じ)は以前からあるので、原因と判断して良いですか?
痔(じ)を持っている方でも、内視鏡検査をしてみるとポリープや大腸癌が見つかることが良くあります。痔(じ)が原因と決めつけず、内視鏡検査をお受けください。
大腸カメラって、恥ずかしいし、大変そうなイメージが強いのですが?
当院の内視鏡検査は苦痛などに極力配慮した検査を実施しています。また、観察部位から恥ずかしいイメージを持たれる方もいらっしゃいますが、デリケートな部位ですので配慮しながら検査を実施しています。また女性の内視鏡看護師が検査中も対応していますので、ご安心ください。
大腸カメラをして、検査結果に「異常なし」と言われたのですが?
便潜血陽性で大腸カメラを実施しても、痔(じ)もなく、ポリープや癌などの隆起がないことも、しばしばあります。原因としては、小腸や大腸は血管が豊富な臓器のため、ときどき僅かに出血することがあります。また、「便潜血陽性=大腸カメラの実施」ですが、胃カメラやバリウムなど上部消化管の検査を実施していない場合には、併せて検査をする必要があります。