十二指腸潰瘍とは
空腹時の右脇腹痛、心窩部痛などが初期状態の主な症状です。また十二指腸の腸壁は比較的薄いため、出血や穿孔が起こりやすく、黒色タール便の下血やそれに伴う貧血などもあります。
穿孔に至ると重篤な状態となりますので、上記のような症状を感じたら早めに消化器内科を受診してください。
原因
ほとんどの原因はピロリ菌感染によるものです。次いで非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)などの薬物の副作用が挙げられます。NSAIDsの成分はロキソプロフェンやイブプロフェンといったもので、市販の鎮痛薬でもこの成分を配合したものがあります。もし、服用していて腹痛などが起こるようなら、薬剤師さんと相談して別のタイプのものに変更しましょう。また医師から処方されている場合、相談して別のタイプの鎮痛消炎薬を出してもらうようにしましょう。薬の変更が難しい場合は、胃酸の分泌を抑える薬や粘膜保護の薬などで症状を抑えながら服用を続けることになります。
さらに、原因としてはストレスや過労、脂肪分の多い消化に負担のかかる食事なども考えられますので、食生活、生活習慣には気をつけてください。
症状
空腹時の右脇腹の痛みや心窩部痛などの胃痛が主な症状です。そのため就寝中に胃痛で目が覚めてしまうこともあります。痛みは焼けるような痛みやうずくような痛みと表現されます。これに伴い、悪心(吐き気)・嘔吐、呑酸・げっぷ、食欲不振などを起こすこともあります。また、症状が進行すると、十二指腸潰瘍では比較的腸壁が薄いため、出血や穿孔まで至ることがあり、注意が必要です。出血した場合、吐血や黒色タール便の下血が起こります。またそれに伴う貧血症状が起こることもあります。また穿孔が起こると激痛となりますので、すみやかに医療機関を受診して適切な治療を受ける必要があります。
検査・診断
ピロリ菌の検査
胃カメラ検査の際、ピロリ菌感染の特徴的な病変を見つけた場合、採取して観察し、ピロリ菌感染の判定を行います。このほかに内視鏡を使わず、呼気や血液検査、尿・検便検査によって判定する方法もあります。
治療
十二指腸潰瘍は、現在ほとんどの場合薬物治療のみで完治できます。プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)などの胃酸分泌抑制薬や粘膜保護薬などを一般的に処方します。また出血による貧血がある場合は貧血に対する薬を処方することもあります。ピロリ菌感染が陽性の場合、症状が落ち着いてから除菌治療を行いますが、症状が軽い場合は、すぐに除菌治療を行うこともあります。薬剤が原因となっている場合は、市販薬の場合は服用中止を、医師の処方による場合は薬の変更を検討します。市販薬の場合、どのような薬が炎症を起こしやすいのか、などについては診断の際に分かりやすく説明します。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌除菌は2種類の異なる抗菌薬(抗生剤)とプロトンポンプ阻害薬(PPI)(またはタケキャプ)を組み合わせた除菌キットを1日2回7日間にわたって服用します。その後1か月以上あけて除菌判定を行い、陰性になれば除菌成功です。この時点で90%程度除菌が成功します。残り10%弱の主な失敗原因は抗菌薬に対する耐性菌です。その場合、抗菌薬の1種類をかえて2回目の抗菌治療を行います。ここまでは、慢性胃炎の診断さえあれば健康保険適用で治療が可能です。2回目までで99%が除菌に成功しますが、もし2回目が失敗した場合、3回目以降は自由診療となってしまいます。